ドリルやエンドミルのような回転工具(以降、回転工具と呼ぶ)を回転させることは、簡単なようで以外と難しい。

回転軸の端末にコレットチャックを付けて回すだけ、なんて考えていませんか?

回転工具を回転させる道具なんて、工場に行けば当たり前のようにあり、簡単に作れると思われる方も多いのではないでしょうか。
確かによくある機構ですが、専用機に搭載するために一から準備するとなると簡単ではありません。

軸受けから回転工具を保持する部分をスピンドル(ユニット)といいますが、このスピンドルユニットを設計から製作するまではかなりの手順が必要になります。
だいたいの手順は次のようになります。

① 性能要求の整理
② ベアリング検討
③ スピンドルユニット設計
④ 部品製作
⑤ 組立

①性能要求の整理

スピンドルユニットを専用機で使用する活用するにはいくつもの要求を満たす必要があります。
要求というと難しく感じますが、例を挙げると以下のようなものがあります。

  • 回転工具を回転軸に適切に保持すること
  • 回転軸を目的に対して適切に精度良く回転させること(ex. 振れ精度○μm)
  • 回転軸を必要な回転速度で回転させること(ex. ○min-1)
  • 回転軸に回転中受ける負荷に対して、適切な精度を維持すること。(ex. 剛性○N/μm)
  • 適切な寿命を有すること。(ex. 連続稼働寿命○hrs)

② ベアリング検討

要求を鑑みて、採用するベアリングを検討することになります。
ベアリングカタログの数値、技術資料などから、使用するベアリング品番とその組み合わせ方、ベアリング間距離、作用点とベアリングの距離などを決めていきます。
このような要求を、全て満足することを目標にベアリング選定を行いますが、
全てを満足できないときには、要求のトレードオフをしてバランスよく性能が得られるようにします。
ここで初めてベアリング検討を行う方は、数値だけを見て技術計算資料をよく目を通さず、期待の性能を得られないことがあります。

③スピンドルユニット設計

ベアリングの保持方法、防塵、組立性などを考慮して、設計を進めます。
設計を進めていくと、やむを得ず②に戻ることもあります。

④ 部品製作

実は製作が最も問題になります。
ベアリングが精度良く正しく組み込まれていないと、ベアリングの性能は正しく発揮されません。
ベアリングを正しく組み込むというのは、ベアリングの内輪と外輪は回転軸に対し同軸に、ベアリング端面は回転軸に対して直角に維持することです。
ただ、その精度が恐ろしくシビアで、それぞれミクロンクラスでの精度を求められます。
そうでないと、動作時にベアリングが異常発熱したり、異常摩耗してすぐに壊れてしまったり、回転精度が得られなかったりします。
ベアリングを保持する関係の部品には、究極の加工精度を突き詰めてようやく形になるといっても過言ではありません。

軸受け廻りだけでなく、軸の回転工具を保持する部分とベアリング挿入面の同軸性も重要です。
ここに振れがあれば、回転工具が振れ、加工精度や工具寿命を劣化させます。

⑤ 組立

ベアリングは非常に繊細な部品です。
ベアリングの嵌め合いがタイトなことが多く、ベアリングを組み込むときにはついベアリングに負荷を与えてしまいがちです。
そうするとベアリングは容易に破損してしまいます。
ベアリングにダメージを与えず組み込む工夫が必要です。

最後に

多くの専用機製造に携わる方は、機械の一要素に過ぎないスピンドルにそこまでの設計時間、製造ノウハウの蓄積は難しいと思われます。
実際、スピンドルに特化した私どものような専門メーカでも、日々工夫と改善を繰り返しており、非常に奥深い分野だと考えてます。
時間、費用と言ったコストを抑える方法として、このような回転軸系は私ども、テクノナカニシのような専門メーカに一任して、お客様は専用機の機能面、効率などの付加価値創造に専念されてはいかがでしょうか。